大型図録本 小学館版 世界美術大全集 東洋編3 三国・南北朝
小学館
2000年初版
494ページ
作品写真図版フルカラー
約38x27x5cm
函入
定価 30,800円 (当時の定価 21,000円)
※月報付き
責任編集
岡田 健(東京国立文化財研究所)
曽布川寛 (京都大学人文科学研究所教授)
『三国志』で有名な魏・蜀・呉の時代から、 隋による統一王朝までの約350年余。この間は、多くの民族が覇権を争った戦乱の時代で あり、同時に人々の危機の意識がインド伝来の仏教への帰依を生んだ時代でもあった。 本巻では、敦煌、龍門、 雲岡の3大石窟を中心 に花開いた荘厳華麗な仏教美術、王侯貴族の 墓室を華麗に彩った出土品の数々、西方との 交流を如実に表す工芸品、「書聖」と謳われ た王羲之を筆頭に、中国の歴史のうえで最高の到達点を示した書芸術の精華を紹介する。
敦煌、龍門、雲岡の三大石窟。人物画の天才顧愷之。書聖王羲之を紹介。
無数の仏教徒によって千年近くも開削が続けられた敦煌の莫高窟、国家安寧のために開削された雲岡と龍門。中国の三大石窟の取材は、現地の気候との戦いでもあった。砂漠の真ん中にある敦煌では、夏季の日中の気温は50度。まさに炎熱地獄である。しかし、石窟に入ると20度を切るという状況である。後漢が滅び、約370年にわたる動乱期に入った中国だが、一方で新しい美術が次々と誕生した。中国で書聖と崇められた王羲之は、4世紀、東晋の人である。彼の書は、唐の太宗がことのほか愛して収集し、清朝に至るまで代々の皇帝の宝物として珍重され続けた。『女史箴図巻』で知られる人物画の天才顧愷之の作品など南北朝時代の絵画や書の展開をフルカラー写真図版でみていく。
大型のフルカラー美術図鑑。三国・魏・晋・南北朝時代の、全世界の美術館博物館に収蔵される、代表的名作ばかりを網羅し鮮明な写真で紹介、各部門の研究第一人者による最新の調査研究をもととした論説、全作品の詳細な解説を付したもので、非常に内容充実した大変貴重な資料本です。
本の構成としては、仏教美術の占めている分量がかなり大きい号です。
【目次】
●総説
本文 三国・南北朝の時代と芸術 曾布川寛
分裂の時代/芸術の成立/仏教石窟の造営
歴代王朝系図
●第1章 彫塑
口絵 彫塑
本文
三国・南北朝の彫塑 曽布川寛
三国 南北朝の陵墓/三国・西晋の彫塑/南北朝の石刻・石獣
南北朝時代における陶俑 八木春生
はじめに / 北魏時代前期の陶俑/北魏時代後期の陶俑/ 東魏時代の陶/北斉時代の陶俑/西魏北周時代の陶/ 南朝の陶/結びにかえて
●第2章 絵画
口絵 絵画
本文 南北朝時代の絵画 曽布川寛
はじめに/土専画
壁画 河野道房
はじめに/三国 晋時代の墓室壁画/南北朝時代の墓室壁画
石刻線画 河野道房
はじめに/昇仙図と孝子図/石刻線画の山水表現
伝世絵画 古田真一
名画の亡失/伝世絵画と顧愷之/戒画から鑑賞画へ/ 山水表現の進展
漆絵 古田真一
2点の北魏漆絵/伝世絵画との比較
●第3章 書
口絵 書
本文 三国・南北朝の書 下野健児
三国以前の書/鍾?の三書体/三国・西晋の銘石書/三国の章程書/三国 西晋の行狎書/三国・西晋の肉筆資料/東晋の銘石書/東晋の章程書・行書/東晋諸家の書/五胡十六国の書/南北朝時代
●第4章 工芸
口絵 工芸
陶磁器/金属工芸/漆工芸/染織
本文
魏晋南北朝時代の工芸 中野徹
三国・ 南北朝時代の陶磁 野村恵子
はじめに/三国・西晋の陶磁 / 東晋の陶磁/南朝の陶磁/北朝の陶磁
魏晋南北朝時代の金属工芸 中野徹
馮素弗墓の出土品/響銅/金銀器の製作/鍍金仏と青銅鏡
三国 南北朝の漆工芸 西岡康宏
はじめに/三国時代の工芸/南北朝時代の工芸
南北朝時代の染織 小笠原小枝
はじめに/シルクロードを通じた交流/ 特色ある染織文様/ 新発見の織物/おわりに
●第5章 仏教美術
口絵 仏教美術
本文
三国晋南北朝前期の仏教美術 石松日奈子
三国・晋・南北朝仏教美術の概観/三国・西晋時代/五胡十六国時代/北魏時代前期/北魏時代後期/北魏の地方造像/庶民および邑義の造像/東晋~南朝 (栄南斉) の仏教美術
南北朝後期仏教美術の諸相 岡田健
はじめに / 南から河北へ/山東の北斉様式/山西の仏像/西魏・北様式の諸相と質/甘粛の仏教美術/江南の仏教美術/四川の仏教 美術/結び
敦煌莫高窟の壁画 北涼から北周まで 劉永增
はじめに /北涼時代/北魏時代/西魏時代/北周時代
三国 南北朝の金銅仏 松本伸之
はじめに/後末期以降/五胡十六国ころ/北魏前期の造像/北魏後 期の造像/北斉北周の造像/南朝の造像/金銅仏の制作技法
北朝の造像記 稲本泰生
造像記の文章/遺像の功徳と廻向
●第6章 建築
口絵 建築
本文 魏晋南北朝時代の建築 田中淡
城と宮殿/仏寺と仏塔/石窟の建築/陵墓石柱と住宅
●テーマ特集
魏晋南北朝時代の鏡 西村俊範
南北朝時代の道教とその造形 スタンレイ・アベ
●作品解説
曽布川寛
八木春生
野村恵子
中野徹
河野道房
西岡康宏
稲本泰生
古田真一
下野健児
小笠原小枝
劉永增
藤岡穣
松本伸之
石松日奈子
岡田健
田中淡
(執筆順)
●資料
魏晋南北朝の墓葬と図像
石窟摩崖造像一覧
三国・南北朝時代の歴史地図
地図 三国 南北朝時代の遺跡
三国・南北朝 美術史年表
参考文献
索引
特別取材協力 中国国家文物局 文物出版社(北京) 故宮博物院(北京) 国立故宮博物院(台北)
【凡例】
本巻は、 中国の三国時代 (220~265) から南北朝時代 (420~589) を中心とした美術をジャンル別に扱っている。時代の範囲は、三国 (魏・呉・蜀)、 晋 (西晋・東晋)、 五胡 十六国、 南北朝時代に及ぶが、 通例、この時代を魏晋南北朝と呼称しており、本文 でもその表記を用いた箇所もある。
収録作品の呼称および名称については、中国での表記を基準にしているが、一般になじ みのない名称に関しては、適宜、 日本での慣用に従って改めている。
収録作品の名称および本文・作品解説中で、難読と思われる用語には、原則として漢音 による振り仮名を付したが、各専門分野での慣例に従ったものもある。
王朝・年号在位年代の西暦 (陽暦) については、原則として 『中国歴史紀年表』 (上海 辞書出版社) に準拠した。
漢字は原則として常用漢字を使用しているが、人名、専門用語、および古文献の引用文 中などでは一部、原文の用字を残したものがある。
本文中、たとえば図版10とあるのは口絵カラー図版10の番号、挿図20とあるのは本文お よび作品解説中の挿図20の番号である。
各所蔵先の名称および英文名は原則として、所蔵先の定める表記に従い、適宜その 所在する都市名等を付した。
【月報 目次】
第16回配本第3巻 三国・南北朝
巻頭対談
民族興亡の時代の仏教美術 井波律子・岡田健
東洋・美の巡歴 16 仏教の道に生まれた新しい芸術 平山郁夫
美に想う 石の文化と木の文化 栗田勇
東洋美術細見 書の表現の成立過程について 石川九楊
複雑な背景
【巻頭一部紹介】
岡田 この巻では三国・南北朝の約 350年間を扱っていますが、本の構成としては、仏教美術の占めている分量がかなり大きいんです。そのなかで取り上げる テーマは何かといいますと、つきつめれば、東と西の 問題と北と南の問題ということになると思います。
東と西の問題とは、つまりインドの宗教である仏教とその美術をどう取り入れていくかということです。人々の憧憬の念はつねにインドに向いており、東西の 交流によって絶えず新しい情報がもたらされ、それを 造形に取り入れていったわけですが、 そのとき、中国の人々にとっての仏陀のイメージはどんなものだったのか。どうやってそのイメージを具体的な彫刻や絵画 として表現したのか。これは、いわゆる仏教美術伝来という視点です。(以下略)