本品は、江戸時代の前期に製作された蒔絵の菓子木皿5枚セットです。絵梨地という技法を用いられており、波文様は、尾形光琳風の表現です。菊花散らしというのも、いかにも皇族の親王にふさわしい文様です。五枚の面の模様がそれぞれ微妙に異なっており、楽しめます。
 
 保管箱の底に「奈良一条院宮拝領」の墨書きがあります。奈良一条院は、奈良市登大路町にあった興福寺の塔頭(たっちゅう)で門跡寺です。天祿元年（九七〇）定昭の創建です。摂関家の子弟が入室し、大乗院と交互に別当に任じられました。近世には1492石の寺領を有し親王入室の門跡としてその権威を保ったとのことです。明治維新後、廃寺になりました。また、東大寺西塔跡のすぐ近くに一乗院宮墓地があります。宮墓地とは皇族の集合墓地です。石柵内右側の被葬者は、真敬親王（1649－1706）であり、後水尾天皇と女御櫛笥隆子の第16皇子です。明暦4年、親王となり、翌年興福寺一乗院の尊覚法親王のもとで得度しました。寛文5年(1665)興福寺・清水寺別当をかね、書・狩野派の画にすぐれたそうです。なお、律令制で、親王とは、天皇の兄弟および皇子の称号をいいます。本品は、蒔絵の技法や状態からみると、狩野派の画にすぐれた真敬親王が自ら下絵を描いて蒔絵師に製作させ、縁故のある関係者に下賜したものであると思います。皇族の親王が自ら使用されていたものであるかもしれず、当時の最高級の蒔絵の逸品だと思います。由緒が明らかで、文化財として価値は高いものと思います。

【サイズ】
  縦13.2cm、横13cm、高さ0.8cm

【その他】
経年変化による断紋が入っています。皿の縁が擦れて、金塗りが剥がれています。皿の底が擦れています。

【入札前に必ずお読みください】
・本品は古美術ですので経年に伴う汚れの他、写真では捉えきれていない傷や割れや直し等がある場合もございます。その様な個所は出来るだけ現状を伝えるように努力はしておりますが、当方での見落としがありうる場合もゼロではございません。この点を理由とした返品は遠慮頂いています事、ご理解の上ご入札ください。気になる箇所がある場合は事前の質問をお願いいたします。

・製作年代等の説明書きは、あくまでも当方(骨董収集歴30年以上)の個人的な見解に基づくものであって内容を保証するものではございません。見解の相違に基づく返品はお受けいたしかねますので疑問がある場合は入札をお控えいただきますようお願いいたします。

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