絶版希少本 深雪アートフラワー らんの造花 技法書 教本 作品集 写真集
飯田深雪・飯田倫子 著
講談社
昭和56年初版
140ページ
約25.6x19x2cm
ハードカバー
※絶版
※巻末作り方解説ページに書込みあり
深雪アートフラワー(布花/造花/染花)の作り方・作品集のうち、ランに特化したもの。
洋ランから東洋ラン、アレンジ面とに用いるための観葉植物など。
ばらと双璧をなすらんは花の貴婦人。貴族的で幻想的な色と形は、一度は手がけてみたいアートフラワーの圧巻。
カトレア、デンドロビュームなど、らんばかりのアートフラワー特集。
アレンジを支える、フェニックス、マランタ、タニワタリ、コリウス、アイビーなどの
観葉植物の作り方もあわせて収載。
豊富な作品カラー写真は、美しい作品のアレンジメント、飾り方とその解説、コサージュからブーケまで、
多種多様な蘭の作品、基本の道具用具、実物大型紙、基本のランの作り方から連続写真でわかりやすく解説。
昭和末期の豊かな時代に丁寧につくられた実用的な教本、応用の幅が広く現代作品にも役立つ大変貴重な資料本。
【序文より】
らんを讃える
〈ばら〉が花の雄なら、〈らん〉はこれに匹敵し得る唯一の花族である。
その清烈な色彩の美とバラエティ。〈ばら〉がはかなき瞬間の美の持主なら、〈らん〉は久しきに耐える、美しい賢婦のよう。
とにかく、らんは長く咲き、薫り高いために長寿のしるしであり、おめでたい時の花となっているのは喜ばしい。
惜しむらくは華麗な洋らんが、人の世に現われて未だ日浅く、人々の心にとどまる歴史の短いことである。
【目次】
饗宴
妍を競う
観葉植物と
レースをバックに
格ある花
花は背景を選ぶ(1)
端麗な白カトレア
華麗
花は背景を選ぶ(2)
金色のらん
壁を飾る
クラシック
らんの祝花
強い性格
温雅な藤紫
花噴水
無造作に活ける
あでやか
緑に映える濃紅色
素直な美しさを単純ならんに求める(1)
高雅
素直な美しさを単純ならんに求める(2)
温和
群舞
素朴
孤愁
地味な中の精彩
めでたき日の装い
めでたき日の装い
カトレアアラモード
らんの気品
エレガントならんの姿
日本の美
〈作り方〉
カトレア
オンシジューム オンシジウム
シンビジューム シンビジウム
アングレーカム
レリア
シプリペジュー厶 シプリペジウム
こちょうらん コチョウラン 胡蝶蘭
ふうらん フウラン 風蘭
シンビジューム シンビジウム
ブルー・オーキッド
カスタード・オーキッド
レナンセラ
オドントニア・ブランシェ
うちょうらん ウチョウラン 羽蝶蘭
デンファレ
カランセ
バンダテレス
いとらん イトラン
しゅんらん シュンラン 春蘭
とき草 トキソウ 朱鷺草
緑らん 緑蘭
バンダ
デンドロビューム
さぎ草 サギソウ
エピデンドラム
〈観葉植物の作り方〉
フェニックス
マランタ・インシグネ
タニワタリ
コリウス
アイビー
コンシンネ・トリカラー
材料・用具・基礎
「パリ展」を終えて
【あとがき】
今から47年くらい前、いわゆる戦前、私は欧州航路でロンドンに向かう途中、(まだ航空機はなかった)、シンガポールに立ち寄ったときのこと、当時の総領事の奥さんが、郊外をドライブにさそって下さり、見波す限りデンドロビュームが美しく咲く畑を廻って下さったのですが、青い青い南国の空の下に広がる華やいだこの花の色は、若かった私の心に興奮に似た胸の高なりさえおぼえさせたものでした。
その頃日本ではまだ、銀座の千疋屋に高い値段で鉢植のデンドロビュームが売られている時代でしたから随分驚いたものでした。
また、戦後間もなく台湾から料理を習いにみえていた人が、古い板に這わせたように植えた白い胡蝶らんを持ってきて下さったことがありましたが、その名前さえ誰もご存知なかったのでした。
当時、らんの中でもいちばんあでやかなカトレアの花を何とか作ってみたいと苦心しましたが、花菖蒲の花びらの細かい脈ひだを応用して作り上げたときは、我ながらうれしくなって、その頃すでに花や料理を習いにみえていたお嬢さんや奥さん方にみせると、一人もカトレアという花をご存知なかったので、しばらく淋しい気持がしたものです。
戦後の疲弊から立ち直った日本が、戦前以上に草花への関心が高まり、最近のらんの栽培の発達したことは驚くばかりです。このらんの本を一冊にまとめるに当って、私は何か日本の繁栄とらんへの関心の高まりが並行してきた気さえするのです。
【著者略歴】
飯田深雪略歴
1903年、医師の家に生まれる。幼時より花を愛し、絵を描くことが好きであった。昔からの、いわゆる造花に反発を感じ、結婚後外交官夫人として暮したアメリカ、ヨーロッパ、インドでの生活の中で、芸術的な造花を創作し、服飾に用いていた。
戦後、望まれて人々に造花を教え、アートフラワーと命名、今日の花に造り育てた。その功績により、勲五等宝冠章を授与される。1975年春、英国エリザベス女王ご来日の際、迎賓館8室をアートフラワーで飾る光栄に浴す。1979年5月、モナコ公国グレース王妃の好意により、モナコ国立展示場において、「飯田深雪アートフラワー大個展」を開催。同年7月、西ドイツ、ハンブルグ郊外にあるブルーメンシュロス(花の城)にアートフラワーの学校を開催し、世界各国の愛好者に指導を行なう。 1981年6月、パリ市主催、在仏日本人使館後援により、ブーローニュの森、バガテル庭園のオランジュリー館にて個展を開催。パリ市長より銀メダル受領。
また、国内においては、アートフラワーと西洋料理を指導する深雪スタジオを主宰し、テレビ、ラジオはじめ、各種団体の講演などに活躍中。アートフラワーをはじめ、料理、テーブル・セッティング、マナー、インテリアなど、著書も95冊余を数える。
飯田倫子略歴
飯田深雪の長女。1928年、当時父の赴任地、アメリカのシカゴで生まれる。 1954年、母・深雪氏の創設した「飯田深雪スタジオ」において、深雪氏の助手としてアートフラワーの制作と指導をはじめる。多忙な深雪氏にかわって全国各地の教室の指導にあたり、西ドイツの花の学校および、モナコ大個展、フランス展に際しては、深雪氏のよき協力者として活躍。パリ市長より母親と共に銀メダルを受く。
現在「飯田深雪アートフラワースタジオ」副主宰。