文庫です。 きれいなほうです。
「オイヌさま」に導かれて、ベッドタウンから山岳信仰の地へ。
護符をめぐる謎解きの旅。
川崎市の実家で著者が目にした一枚の護符。描かれた「オイヌさま」の正体とは何か。高度成長期に、小さな村から住宅街へと変貌を遂げた神奈川県川崎市宮前区土橋。古くから農業を営んできた小倉家の古い土蔵に貼られた「オイヌさま」に導かれ、御岳山をはじめ関東甲信の山々へ――護符をめぐる謎解きの旅が始まる。
都会に今もひっそりと息づく山岳信仰の神秘の世界に触れる好著。
【目次】
まえがき
地元の子どもたちへの手紙
第一章 三つ子の魂百まで
取り残された土蔵の前で/新しい街の片隅から/茅葺屋根の家での暮らし/橘樹郡/地縁血縁「/大きな歴史」「小さな歴史」/竹の里/まぼろしのタケノコ栽培/お百姓の身体に宿るリズム「/オイヌさま」の謎「/土橋御嶽講」
第二章 武蔵の國へ
いざ武蔵御嶽神社へ/多摩川への畏れと感謝が生んだ「御嶽講」/日本人と川「/お山」の世界へ/雨乞い
第三章 オイヌさまの源流
「オイヌさま」の故郷/里びとを山へ導く、山びと「御師」/山の神楽/山の行者「御師」と庶民の信仰
第四章 山奥の秘儀
秘儀・太占/太占のルーツ「/太占祭」の記録「/太占」を読み解くお百姓を求めて/お百姓の底力
第五章 「黒い獣」の正体
「黒い獣」と「大口真神」/山とオオカミ/動かざる山への信仰/オオカミの頭骨を祀る家/縄文にさかのぼるオオカミへの信仰/オオカミ信仰のひろがり/武蔵國/大山塊を越えてやってきた「あにぃ」
第六章 関東一円をめぐる
「奥武蔵」へ/秩父の「わらじ親」/神と仏のあわいに/宝登山の「お犬替え」/「お犬さま」と「オオカミ」/秩父の「手締め」/東国武士と秩父「/お山」は文化の発信源
第七章 オオカミ信仰
「オオカミ神社」と「お炊き上げ」/猪狩山へ/古池耕地の人びと/手刷りの「オオカミの護符」/霊験譚/猪狩神社奥宮祭/山の祭りと海のサンマ/赤もろこし/土地の人に添う/ヨソモノの受け入れ方「/一人でやれば苦役でも……」/「鬨の声」
第八章 神々の山へ
三峰山/心直ぐなる者/遠宮「御焚上祭」と赤めし/守護不入の地/神領門前三六戸「/生まれ育った土地」の引力/オオカミ、焼畑、ヤマトタケル……/「オオカミの護符」の誕生/先祖からの「ゆずり」/「お山さま……」
第九章 神々の居場所
「神々の住まうべーら山」
あとがき
参考文献・出典
文庫版あとがき
解説:内山節
小倉美惠子
1963(昭和38)年、神奈川県川崎市宮前区土橋生れ。アジア21世紀奨学財団、ヒューマンルネッサンス研究所勤務を経て、2006(平成18)年に(株)ささらプロダクションを設立。2008年、映画「オオカミの護符―里びとと山びとのあわいに」で文化庁映画賞文化記録映画優秀賞、地球環境映像祭アース・ビジョン賞を受賞。