
川崎雅(かわさきただし)筆「古呂柿」紙本彩色です。
作者は高松市出身で、東京美術学校(現在の東京藝術大学)を卒業し、帝展に7回入選するなど将来を嘱望されながら、
第二次大戦に従軍の後に、フィリピンにて33歳で戦死された、いわゆる戦没画家の一人です。
戦没画家の作品の収集、顕彰で知られる上田市の「無言館」にも収蔵されています。
本作品には、おそらくこれを画家より入手した(またはその周辺の)人による覚え書があり、それには、
『川崎雅画伯は 美校出身にて蓬春画伯門下の逸才であったが 太平洋戦に応召、遂に戦死した。殊に惜しい人であった。
氏の作品は学生時代より毎回、院展(ママ)に出品入選した。この古呂柿は、氏の独創的作品の一つで、
師蓬春も試作一枚を記念に持ち帰った、他の一枚がこの絵である。』
とあります。特に師である山口蓬春とのエピソードは貴重だと思います。
実際にこの絵は、独特なマチエールを持った、静かな印象ながら創意の漲るものです。おそらくプラチナ泥なのか金属質の顔料を使っており、
全体として独特な光沢があります。干し柿の質感を巧みに捉えながら、一個一個の姿が表情豊かでリズム感があり、じっと見ていて飽きない優れた作品です。
師が感心したという話も頷ける気がしますし、この画家が、伝えられる通り優れた資質を持ち得ていたことを確信させられます。
落款は、絵には「雅生」、箱は画号の「白雅」で、印は共に「雅」とあります。異なるのは試作ゆえなのか、あるいは絵の制作と軸装および箱書の間に時間があったのかも知れません。
軸装も堂々としたもので、依頼した人も力を入れていたことがわかります。軸端は塗り物です。
《状態》
◯少し前まで長く開かれずに置かれていたもので、本紙に折れ皺があります。
◯画面の絵具部分にわずかに痛みがあります。見えるものでは、左から二つ目と四つ目の柿(下)にそれぞれ1~3ミリほどの剥落があります。
試作的な技法ゆえに脆弱な面があったようにも思えますが、どれも小さなもので、複雑な絵の質感もありあまり目立つものではありません。写真にてご確認ください。
◯本紙の上下端はいくらか痛みが見られます。写真で中央下部に見られる水跡のようなものは、照りがあり技法的に塗られた顔料の跡です。
◯軸装部には、皺など経年のもの以外、ほぼ問題は見られません。
◯共箱は、外部には全体的にシミが出ています。中はきれいです。
◯総じて、現状でも十分に鑑賞に耐える状態だと思います。軸装はそのままに修復をする場合も、軽い処置で済むのではないでしょうか。額装に改めても良いかもしれません。
《サイズ》
本紙
縦:34.5センチ
横:54センチ
掛軸
縦:125センチ
横:67センチ
《お願い》
コレクション整理のための出品です。公正なオークションのため、新規の方や評価の悪い方など、こちらの判断で入札を取り消させていただく場合がありますので、ご了承ください。
早期終了はいたしません。
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《発送》
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