『鏡花全集』春陽堂 全15冊揃 復刻版 天金装
大正14年から昭和2年にかけて春陽堂から刊行された泉鏡花生前の「鏡花全集」全15冊を、1994年に忠実に復刻した全集です。

監修は村松完孝氏によるものです。

元の全集は鏡花50歳の誕生日を記念し、春陽堂が総力を挙げて刊行した全集。
『非売品』として各巻数百部のみしか印刷されず、かつ、高額であった為、当時は「幻の全集」とされました。

①編輯委員は小山内薫、谷崎潤一郎、芥川龍之介、久保田万太郎、里見弴、水上瀧太郎の6名という錚々たる布陣で編まれた全集として、今も鏡花ファン垂涎の御本になります。

②本冊の装幀は岡田三郎助画伯が担当しており、天金総絹張透絵金線の豪華な造本となっております。

③函装は小村雪岱の指導により天地リベット金具止めになっており、小村雪岱特有の「雪岱文字」によって作品名が印刷されています。

編輯委員の1人、芥川龍之介は刊行の開口目録に、
「鏡花泉先生は古今に独歩する文宗なり。先生が俊爽の才、美人を写して化を奪ふや、太真閣前、牡丹に芬芬の香を発し、先生が清超の思、神鬼を描いて妙に入るや、鄒湛宅外、楊柳に啾啾の声を生ずるは已に天下の伝称する所、我等亦多言するを須もちひずと雖も、其の明治大正の文芸にロマン主義の大道を打開し、艶は巫山の雨意よりも濃に、壮は易水の風色よりも烈なる鏡花世界を現出したるは啻に一代の壮挙たるのみならず、又実に百世に炳焉たる東西芸苑の盛観と言ふ可し。」
と広告文を残している事は有名です。

昭和2年に自裁した芥川龍之介の枕元には、「鏡花全集」の最終配本が置かれていた逸話もございます。

後の岩波書店から刊行された新「鏡花全集」の礎ともなった、春陽堂「鏡花全集」の忠実な復刻版、是非お薦め致します。


（2024年 12月 25日 2時 39分 追加）
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