今回のターンでウリキリます！ 金剛不壊の輝き カルティエ 0.45ct F VVS1 VG PT950 婚約指輪 #50 未来を照らす覚悟の灯火
ふん、まったく近頃の若い連中はなってない。
「相性」だの「価値観が合う」だの、まるでインスタントの味噌汁を選ぶような手軽さで、一生を共にする相手を決めようとする。愚の骨頂とはこのことだ。いいかね、よくお聞き。お前さんたちが勘違いしている、人生における最も重大な真実を教えてやろう。
結婚というものはな、自分と最も「相性の悪い」相手とするものなのだ。
驚いたかね？ だが、これが真理だ。考えてもみろ。自分とそっくり同じ考え、同じ好み、同じ歩幅の人間と一緒にいて、そこに何の発見がある？ 何の成長がある？ それは心地よいかもしれんが、ただの停滞だ。ぬるま湯に浸かって、ふやけていくだけの魂に、何の価値があるというのか。
人間がこの世に生を受ける意味、それは「修行」に他ならん。己の未熟さ、至らなさ、我儘、醜さ。そういったものと向き合い、削り、磨き、ほんの少しでもマシな人間になって死んでいく。そのための最高の砥石が、自分とは全く理解し合えない配偶者なのだ。
価値観が違うから、ぶつかる。趣味が合わないから、苛立つ。言葉の裏が読めないから、すれ違う。その一つ一つが、お前さんという名の、いびつで角張った石を削るヤスリなのだよ。その痛みを伴う摩擦の先にしか、魂の輝きは生まれん。相性がいい相手とは、ただの共依存だ。傷を舐め合って安心しているだけの、怠惰な関係に過ぎん。
「じゃあ、愛とは何だ」と聞くか。愛とはな、「この、どうしようもなく相性の悪い相手と共に、人生という名の修行をやり遂げてやろう」という、無謀で、気高く、そして途方もない「覚悟」のことだ。
そこで、この指輪である。
私の長年の付き合いである質屋の蔵から、ひょっこり顔を出した逸品だ。カルティエ。王の宝石商、宝石商の王。俗物がありがたがるブランドの名前など、本来どうでもいい。だが、このメゾンがなぜ150年以上も一流であり続けているか、その理由は、彼らが「本物」の何たるかを知悉しているからに他ならない。
まず、この指輪の地金を見ろ。PT950、プラチナだ。純度95%。そこらの若い娘が喜ぶような、華やかで柔な18金などではない。ずしりと重く、冷たく、そして永遠に変色することのない、孤高の金属。その静かな銀白色は、多くを語らず、ただそこにあるという事実だけで、圧倒的な存在感を放つ。まるで、厳しい冬の夜空のような、静謐な覚悟の色だ。この指輪の重量、3.3グラム。指にはめた瞬間、その重みが「覚悟」の重さとして、お前さんの神経に直接語りかけてくるだろう。
そして、中央に鎮座する、この一粒の金剛石。
中央宝石研究所の折り紙付きだ。こういう鑑定書はな、ただの紙切れではない。美の本質を理解する人間たちが、その眼と知識と経験のすべてを注ぎ込んで記した、「真実」の証だ。
カラットは、0.454ct。
大台の0.5ctにわずかに届かない、この数字がいい。満ち足りる一歩手前の、この渇望感。完璧ではないが故の、人間的な愛おしさ。人生とは、常にそういうものだろう。
カラーは「F」。
無色の頂点であるDから数えて3番目。しかし、素人が見てDとの違いが分かるものか。これはな、 абсолютная（アブソリュートナヤ）…完全無欠の冷たい光ではなく、どこかに人の営みの温かみを許容する、絶妙な「白」なのだ。厳しくも、どこかに慈悲を秘めた光。これこそ、人生を共に歩む灯火にふさわしい。
クラリティは「VVS-1」。
Very Very Slightly Included 1。熟練の鑑定士が10倍のルーペで覗いて、ようやく発見できるかどうかの、微細な微細な内包物。これぞ、美の本質だ。完璧な無傷など、この世には存在しない。存在するとしても、それは人工的で、つまらない。このVVS-1という等級は、「ほぼ完璧」であるがゆえに、奇跡的なのだ。生まれながらにして持つ、ごく僅かな個性の証。それは、お前さんや、お前さんの伴侶が持つ、消すことのできない「業」のようなものかもしれん。それすらも抱きしめて、このダイヤモンドは永遠に輝くのだ。
そして、カットは「VERY GOOD」。
素晴らしいじゃないか。「EXCELLENT」という、機械的で冷たい最高評価ではないところが、またいい。そこには、職人の手の痕跡、人間の判断の温かみが残っている。光の反射を計算し尽くしながらも、どこかに「揺らぎ」を許容する。このダイヤモンドが放つ光が、時に強く、時に優しく、複雑な表情を見せるのは、この人間味あふれるカットのおかげだ。人生も同じだ。常に100点満点の完璧な日々などありはしない。良い日もあれば、悪い日もある。その揺らぎの中で、二人の関係が磨かれていくのだ。
この「Fカラー、VVS-1、VERY GOODカット」という三位一体。これは、ただのスペックではない。これから始まる、厳しくも美しい「修行」の道筋そのものを表している。
このダイヤモンドを支える、4本の爪を見ろ。カルティエの伝統的なソリテールセッティング。華美な装飾はない。ただ、この一点の光を、最大限に美しく見せるためだけに存在する、機能美の極致。この4本の爪は、夫婦を支える4つの柱だ。「慈悲」「忍耐」「尊敬」、そして「諦念」。この4つが、相性の悪い二人という、燃え盛る魂の塊を、しっかりと支え続けるのだ。
サイズは#50。日本の10号だ。少し細いかもしれん。だが、サイズ直しなどという野暮なことは考えるな。この指輪が選んだ指の持ち主こそが、この「修行」に挑む資格を持つ者なのだ。
諸君、もう一度言う。
結婚とは、安らぎの港ではない。荒れ狂う大海原へ、二人で漕ぎ出す、小さな舟だ。この指輪は、その航海を約束するものではない。ただ、暗闇の中で進むべき方向を、かすかに照らし続ける「灯火」なのだ。
このカルティエの指輪を、ただのアクセサリーとして欲しがる者には売る気はない。
「相性が悪い、結構じゃないか。その困難、乗り越えてやろうじゃないか」
そう腹を括れる、骨のある男、あるいは女にこそ、託したい。
この指輪を手にするということは、安易な幸福を捨てるということだ。その代わりに、人生の最も深遠な味わい、魂が磨かれていく本当の喜びに、手を伸ばすということだ。
さあ、覚悟はできたか？
この未来を照らす灯火を手にする、その資格がお前さんにあるというのなら、入札するがいい。
わしは美味い肴と一献やりながら、お前さんという、見所のある人間の登場を待っていることにしよう。ふん。
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