絶版希少本 音の遍歴 FM選書 高城重躬
高城重躬 著
共同通信社 発行
昭和52年2刷 (昭和49年初版)
326ページ
約18x13x2cm
モノクロ
ソフトカバー
※絶版
本書はFMfan昭和四十六年一月から二年三ヵ月間にわたって連載されたエッセイ「音の遍歴」をまとめたもの。
生涯かけた音楽への愛情、原音再生にかける情熱。それらがこの「音の遍歴」に凝縮されている。
オーディオ、音楽をこよなく愛する人々に贈る一冊。
音楽家の家に生まれ究極の再生装置を求め続けた、高城重躬氏は、
両親が音楽家、東京高等帥範学校(理科・数学)に在学中、東京芸術大学でピアノを専門的に学び、数学の教師を勤め上げたという異色の経歴の持ち主であり、
身近で聞いた生の音を高忠実度再生することに生涯を捧げた人物。
趣味のオーディオ愛好家のみならず、独創的なオーディオシステムの設計・開発を通じて日本のオーディオメーカーにも多大な影響を与えてきた。
著者の「ガラクタ部屋」と称するコンクリートホーンを中心とした究極の部屋の写真、レシーバーで聴く黎明期の2球式ラジとその内部、糸回しターンテーブル、昭和28年頃のうなだれホーン、昭和31年頃の中音ホーン、アウトプット・トランスレス・アンプ(OTLアンプ)試作号、OTLの電源部、愛用のプレーヤー・装置のレイアウト等の、小さいですが貴重なモノクロ古写真も掲載。
戦前戦後にかけてのオーディオ発展の歴史が分かる、現代においても名著と称される、
音響関係者、オーディオ愛好家必携の大変貴重な資料本。
【目次】
私のガラクタ部屋
ラジオの黎明期
ヴァイオリンと私
ホーンの話
LP事始め
ザーサイのかめ
ピアノと私
新しい部屋と音響
中音用ホーン型スピーカー
高音用ホーン型スピーカー
真空管式からトランジスタ式へ
レコード・コンサート
録音の楽しみ
FM放送事始め
アンマさんの笛とチャルメラ
とっくりの効用
電話とヘッドフォン
ピアニスト、ハンス・カン氏のこと
レコードと録音
芸術祭参加レコードの審査
おみくじ箱
私の再生装置
音と人
数学と私
趣味に一貫性を
あとがき
【私のガラクタ部屋 より一部紹介】
何しろ足の踏み場もないガラクタ部屋である。この間(昭和四十五年十一月二十三日)も文化放送の中継車が来て私の部屋から生放送が行われた。私が弾くピアノをその場で録音、再生してみせたが、取材のコロムビア・トップさん、スピーカーの音を本物のピアノが鳴ったと思ってピアノをのぞきに行くといった一幕もあった。トップさんが天井に大きなラッパがあって、部屋の広さは八畳くらいですと紹介された。本当はきく位置まででも十二畳、そのうしろも含めると十五畳あるのだが、あまりにも雑然としているため非常に狭く見えるのだ。
写真を見てから私の部屋を訪れる人は写真の印象と違うのにびっくりするようである。正面にグランドピアノ、左側にアップライトピアノ、前方天井に二つで重さ500㎏のコンクリートホーン、その下に朝顔型の中音ホーンと中高音ホーン、そして小さな高音ホーンがあり、右方の手前にはプレーヤー、その中のターンテーブルは現在のベルトドライブの先駆となった糸ドライブ式、その隣りの自作コントロール盤はつまみだけでも43個、テープレコーダーは10インチリールのかかる大型が2台、普通のが2台、そのほか小型2台。これだけならまだしも(以下略)
著者について
【高城重躬】
明治45年東京生まれ。昭和8年東京高等帥範学校理科第1部(数学)卒。在学中東京音楽学校(現芸大)選科ピアノ科に、その後作曲科に入学。ピアノを榊原直、作曲を橋本国彦に学ぶ。都立芦田高校数諭、都立南高校、都立深沢高校校長などを歴任。昭和47年定年退職。昭和35年東京都教育委員会より表彰される。著書に『LP技術事典』『レコード音楽論』『オーディオ100バカ―新しいオーディオの考え方』『音楽を聴くオーディオ再生』などがある。