・書籍名 : Lithops in Habitat and Cultivation
・著者名 : Roy A. Earl & Janice E. Round, Janet Snyman (Illustrations)
・出版社:Privately published(自費出版)
・発行年:2021年
・形式 : 洋書(英語)、303mm x 218mm、405ページ、ハードカバー
新本を個人保管していました。外部・内部も含めて状態は非常に良いと思います(写真参照)。3年前の比較的新しい書籍ですが、自費出版の関係か出荷数が少ないようで、既にレア本となっています。
<書籍説明>
本書はアフリカ南部を中心にしたハナミズマ科のLithops属(リトープス)のリビジョン及び総合解説書となります。400ページ超えの大判ハードカバーですので、ドッシリと重い書籍となります。
著者はイギリスの鳥類研究者で獣医師のRoy A. Earl(ロイ・アール)と、定年した学校教諭のJanice E. Round(ジャニス・ラウンド)の2名となり、アマチュア研究者となります。両名はナミビアと南アフリカ共和国の現地調査を繰り返しており、三桁の生育地を訪れているようです。また、現地で減少しつつあるLithopsの保全対策についてレポートを出しています。
また、英国サボテン多肉植物協会(British Cactus & Succulent Society. 通称BCSS)の会員や、多くの研究者やKew王立植物園関係者のサポートを受けており、内容的にも信用に値します。
また、本書の全種に対して扉絵として、綺麗で緻密な植物画が掲載されていますが、こちらは南アフリカのブルームフォンテーン自然史博物館所属のイラストレーターのJanet Snyman(ジャネット・スナイマン)が手掛けており、また所々に彼女が書いた漫画的な挿絵も掲載されています。
内容としては、Lithopsを40種26亜種48変種(88分類単位)として扱っていますが、なかなか分類に戸惑うコロニーも多数あるとの事です。なお、他の分類体系でも、種・亜種・変種レベルでは諸説あります。
ページ数が400項を超え、とにかく1種1種に対する情報量が多く、全種の写真が現地株写真となり、多くの地点の変異も含み、また引いた画角の生育環境写真も多くなります。おそらく、過去に出版されたLithops関係の書籍の中でも現地写真の量はズバ抜けて多いと思います。ここに種ごとの自然史関係の歴史、分類学、形態、生態、生理、土壌、気候、分布(地図)、引用文献、園芸品種との関係等と一通りの情報がしっかりと記述されています。
一方で、後段には本書で採用された分類体系が掲載され(Apendix 1)、更にその全種の写真がまとめて掲載されています。これはなかなか素晴らしく、通常はこの手の生態写真で溢れた書籍は、各種が様々なページに散っているため、全種を一望するのが困難なのですが、コンパクトなインデックスとしては極めて優秀かと思います。
また、園芸品種については、後段でまとめて写真付きで紹介されており、各品種の出現時期や出自情報まで詳しく記述されています。この中には日本由来の園芸品種も多数掲載されており、その起源や元になった原種についても記述があります。この手の自然史系の書籍では、園芸品種の解説は手薄になりがちですが、逆に園芸本でもここまで詳しいものも珍しく、英国の園芸文化の奥深さを感じられる部分です。
これ以外にも、参考資料として栽培方法、種子による分類学的な研究(電子顕微鏡)、発生学研究、同所的に生育する多肉植物との関係、全種の分布総括、土壌関係のレポート、各部位の専門用語一覧、著者紹介まで、詰め込んだ情報の目白押しとなり、この1冊でLithopsの現状や研究状況は概ね判明する書籍で、とにかく凝りに凝って、盛りに盛った書籍です。
なお、本書はイギリスのロンドンにあるLavenham Pressという歴史ある印刷所でプレスされています。これが印刷や紙の選別、書籍自体の造りに至るまで、なかなか雰囲気が良い書籍だなと感じています。ただし、堅牢性はやや低いように感じますので、大事に扱う必要があるかと思います。
ただし、これだけの内容がありながら、自費出版となり、そもそもの冊数が少ないようです。2021年発行と比較的最近の書籍ですが、既に市場では品薄で入手難となっていますので、お求めの方は早めに入手することをお勧めします。この手の分類群の範囲の狭い自費出版モノの専門書籍は、重版がありませんので、市場にあるうちに入手しないと、なかなか入手に苦労する事になります。これだけの内容で少数となると、将来的には古書市場で凄まじい価格に跳ね上がるかと思われます。