出版社 : 創元社
三木 善彦 (著)
自己を知るための内観療法入門書
日本人の心性に根ざした内観療法入門書、新装復刊。してもらったこと、して返したこと、迷惑かけたことの3つを内省することで自己発見へと導く内観療法。体験者の声や心理的変化を詳細に綴るほか、日本文化との関連性を考察。多角的な理解を深める手引き。
内観療法とは、過去から現在に至るまでの対人関係のなかで、
「してもらったこと」「して返したこと」「迷惑かけたこと」を振り返り
徹底的に自己を見つめ直すことで、自分本来の生き方をつかむ精神療法。
吉本伊信が、浄土真宗の一派に伝わる「身調べ」という求道法から宗教的色彩を除き、
誰にでもでき得る形に発展させたものである。
臨床心理学を講じていた著者は、大学院生当時に出会ったこの内観療法に注目。
一研究者として、内観者(内観療法を受ける人々)にテストを実施する等の
実践的な研究を行い、自身も内観体験者・指導者としての経験を重ね、
少年刑務所での指導や相談も行うようになる。
本書では著者の実体験に加え、内観者の声や実際の記録を引用し、
詳細な事例を豊富に掲載。
内観者自身が語り綴る言葉の数々は胸を打つものがあるが、
その一方で、内観療法を受けた後の心理的変化の測定結果や
内観療法をめぐる諸問題も提示し、客観的な見方も示されている。
なぜ日本人がこの療法を受け入れやすいのかの興味深い考察もなされており、
内観療法を多角的に理解するのにふさわしい入門書である。
情報過剰の現代において、外界からの情報を一つでも多く得ようとあくせくする前に、
自己の内界からの情報に耳を傾け、それによって自己の精神の修養を図り、
安定と豊かさを求めねばならないのではなかろうか。(本文より)
【主な目次】
序 文 内観研修所長 吉本伊信
◆第一章 私の内観入門
一 一巻のテープ
二 入門失敗
三 研究の開始
◆第二章 内観の構造
一 場 面
二 内観者
三 指導者
四 テーマと内観的思考様式
五 面 接
◆第三章 内観の過程
一 導 入
二 場面探索
三 内観模索
四 内観進展
五 抵抗とその解消
六 洞 察
七 弛緩と緊張
八 終 結
〔内観終了時の面接〕離婚訴訟中の夫婦の事例
◆第四章 内観による心理的変化の測定
一 P-Fスタディによる測定
二 自己評価・他者評価テストによる測定
三 TATによる測定
◆第五章 自己嫌悪の女性の事例
一 内観法の医学界への導入
二 自己嫌悪の女性の内観体験記
三 考 察
◆第六章 少年院生の事例
一 内観法の矯正界への導入
二 少年院生の内観
三 考 察
◆第七章 理想的内観者との訪問面接
一 訪問面接
二 心理テストの結果
◆第八章 吉本伊信氏との対談
自己探究への苦闘
内観法を広める
悩みの原因
自己を知ることの意味
内観は我慢くらべではない
内観法は「汝自身を知る」方法
◆第九章 内観法をめぐる諸問題
一 内観法における罪について
二 内観法における愛について
三 日常内観について
◆第十章 日本文化と内観法
一 母性の重視
二 自己否定の傾向
三 精神修養の伝統
あとがき
参考文献
内観希望者のために
著者について
1941年京都市生まれ。臨床心理学者。臨床心理士。
大阪大学文学部卒業(心理学専攻)、大阪大学大学院博士課程修了。
1983年、妻・潤子と共に奈良内観研究所を開設。
神戸松蔭女子学院大学、帝塚山大学を経て、大阪大学名誉教授、帝塚山大学名誉教授。
日本内観学会副会長、大阪刑務所および奈良少年刑務所篤志面接委員を歴任。
なら犯罪被害者支援センター理事、奈良県臨床心理士会理事、奈良いのちの電話副理事長、
大阪被害者支援アドボカシーセンター顧問も務める。
日本心理臨床学会名誉会員。2012年藍綬褒章受賞。
著書に『内観療法』(共著、医学書院)、『心理療法の本質』(共著、日本評論社)、
『内観療法』(共著、ミネルヴァ書房)などがある。
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