In-Q-Telは、1999年に米国CIAが設立したIT分野を対象とする非営利のベンチャー
キャピタル(VC)である。IT分野の技術発展は速く、ベンチャー企業による貢献が大き
いため、国防・諜報部門が以前から有する機関内研究開発や国防関連企業等からの調達
では、必要な技術の適時な入手が困難であった。そこでCIAは、民間VC、ベンチャー
企業のネットワークにつながり、有望な技術を有するベンチャー企業を発掘、育成し、
商業的成功を支援し、併せて対テロ戦争の時代にCIAが必要とする技術を調達するため
に、In-Q-Telを創設した。
In-Q-Telの事業規模は決して大きくはないが、その成果は大きい。出資先には著名な
ITベンチャー企業が並び、人工知能、ビッグデータ等の先端的IT分野の基盤技術の発
展に寄与し、商業的成功に結び付いた上に、国防・諜報分野での技術の活用の点でも多
大な成果を上げた。その上、株式売却によって出資金の回収にとどまらず追加的なキャ
ピタルゲインも得ている。
In-Q-TelはIT時代の両用技術振興のモデルとなった。米国同時多発テロ後には、テロ
リストの探索やサイバーセキュリティが重要になり、伝統的な正面装備よりも、先進的
なITや情報システムの装備が喫緊の課題となった。そこで、In-Q-Telが注目され、複数
の国防・諜報機関が類似の政府系VCを設立した。ただし、このような政府系VCの活
動は2000年代前半に活発化したが、現時点ではほとんど残っていない