本機も私の特にお気に入りのアナログレコードプレーヤーです。
私は故長岡鉄男氏のファンですが、長岡氏が推奨していたQL-7Rなどの系統の機種です。
QL-7は単品ターンテーブルTT-71を組み込んだプレーヤーシステムですが、本機は同様に単品ターンテーブルTT-61を使って組んだプレーヤーです。
とても古い機種なので長岡氏がどのように評価していたのかはわかりませんでしたが、QL-7Rなどは高く評価し推奨していたので人気機種になりました。
本機クラスでは新品時にカートリッジは付いてなかったと思いますが、付属をお望みの方が多いようです。
そこで即決で購入された方には本機に見合うオーディオテクニカ製高性能VMカートリッジAT-E70をお付けします。
このシリーズは本当にCPがとても高くとてもよい音なのですが当時としては進みすぎたデザインのせいか全く人気がありませんでした。
AT-E70はシリーズでは上から2番目の上級機です。針は希少な無垢楕円針。現在は同クラスの針だけでも2万円はするかと思います。
現在のテクニカカートリッジに通じる楕円針を活かした明るくダイナミックで解像感の高い緻密な音と言えるでしょう。
値上がりしてしまった現在では同格といえる機種はとても高額になっていますね。
私はこのAT-Eシリーズの音と仕様はとても気に入って全て持っています。
使用時間はわかりませんが現状とてもクリアーで繊細に切れ込む無垢楕円針らしい素晴らしい音を再生します。
テクニカ純正シェルつきです。このクラスのシェルも現在ではとても高価になってしまいました。
即決価格は少し高額になりますが損はさせません。私の絶対のお勧めの組み合わせになります。
QL-7のTT-71や上位機種のTT-81などはクオーツロック化されたDCサーボモーターを使用したダイレクトドライブですが
本機のTT-61はクオーツロックではなく、ACサーボモーターを使ったダイレクトドライブです。
このACモーターの採用がこの機種の大きな特徴といえるでしょう。
ビクターはこのモーター以前にはDDの第一人者の松下製のDCモーターを使っていました。
MICROやAurexなども松下製のDCモーターを使っていましたが、ビクターはその後自社でモーターを開発し
特にTT-71に採用したDCモーターはYAMAHAなど各社に供給することになります。
本機のACサーボモーターはかつてのDENONが特に拘って使い続けていたものと同様です。
ちなみに現在のDCモーターになってしまったDENONプレーヤーは気の抜けた全くの別物ですね。
DCモーターはローターに永久磁石を使っているためどうしてもコギングが発生するとされます。
ACモーターは原理的にコギングは発生しません。普通、ACモーターといえばベルトドライブ機などに使われる
電源周波数に同期するシンクロナスモーターがよく知られています。
シンクロナスモーターは電源周波数に同期するのでそのままでは回転数を変化させて調整できるサーボモーターにはできません。
ダイレクトドライブ機ではエディカレント(渦電流)型ACモーターを使うことで簡単にサーボモーターになります。
ローターはマグネットではなく銅カップを使ったACモーターなのでもちろんコギングも発生しません。
このため現在でも特にこのACサーボモーターの方が音が良いとされるマニアの方も多く居られるようです。
また、このモーターではトランスレスが可能なので大きなトランスからの振動やノイズからも逃れられます。
MICROのDD-5やDD-7などは現在でも非常に人気が高いのですが、使われているモーターは実は本機のモーターと同じビクター製です。
本機はMICRODD-5などのオリジナルの原器ともいえます。
このACモーター採用が本機の大きな特徴でしょう。残念な事にACモーターは現在ではほぼ絶滅状態のようです。
トルクではどうしてもDCモーターに負けてしまうということでしょうか。
キャビネットは単売品ではありませんが、単売品同様のアームを簡単に交換できるアームボードが付いています。
現在では純正ボードは入手できないでしょうが、割合簡単に自作可能かと思います。
長岡式の鉛板などもよいでしょう。
本機のアームはビクターの単品アームのUA-5045とよく似ていますが少し簡略化された本機向けと思われます。
UA-5045は上位機種UA-7045からヘリコイド式高さ調整機構を省いたもので、7045は長岡氏が
『値付けが安すぎて売れなかった、倍の値段だったらもっと売れただろう』と仰ったので販売終了後に大人気になったものです。
現在でも人気は高いのですが、実際はより資材を投入したヘリコイド機構のガタなどによって強力にアームベースには取り付けできないため
音的には5045の方が優位性があります。長岡氏もそう指摘されていたようです。
本機のアームはUA-5045を簡略化してありますが、実質的には音は同等でしょう。
その後のQL-7などにも同系統のアームは搭載されていますが、さらに簡略化されています。
このアームは単売品同様の5ピンコネクタを採用しているので簡単にお好みのフォノケーブルにグレードアップができます。
ちなみにこのアームには今でも入手できるテクニクスのSL-1200シリーズ用のサブウエイトの小さいサイズが使えます。
ビクターの他の同タイプのアーム、UA-7045やQL-7などにはネジ径が違うので使えません。
実質単売品UA-5045相当のアームなのでとても価値があります。でもアームだけ取り外して売らないようお願いします。
この機種はよく見かけるのですが、情報がほとんどありません。
JL-B41や51、55などの上位機種で後に発売されたのではないでしょうか。
同じモーターはJL-B31やJL-B41Ⅱ、MICRO DD-5、DD-7、TAKE-5などに使われましたが、この後はDCモーターになります。
ビクター機としては希少なモーターなのでとても気に入りました。
MICRO機はとても人気ですが肝心のモーターは本機がオリジナルなのです。
そこで本機は複数台入手したうちの、動作に問題なく程度の良いものを簡単にクリーニング、メンテナンスしたものです。
モーターはローターを外して古い油をふき取り、新たに超潤滑性の特別なオイルを注油しました。
回転調整ボリュームやスイッチ類は信頼できる接点復活剤を複数使い分けてクリーニング、接触不良は無く動作は良好。
回転もとてもスムーズに調整できます。
この接点復活剤オーディオメーカーをはじめPCや航空関係などのメンテ用に指定される本当に安心の製品です。
タバコのヤニで茶色く汚れる事の多いプレーヤーですが全体を特殊なワックスなどでクリーニングしました。
ダストカバーはコンパウンドで軽く磨き特殊なクリーニングワックスで仕上げました。かなりクリアーで綺麗ですが僅かに細かいキズはあります。
その他、アーム、プラッターなどの金属部も金属磨きクロスで丁寧に磨きました。
ビクターのこのタイプのアームは連結部のゴムが劣化してウエイト部が下がるものが多いのですが本機ではほとんど問題ありません。
いままで多くのこのタイプのアームを整備してきましたがゴム劣化の原因がわかってきました。
全く問題ない本機と酷く劣化した機体があるのは使い方が原因のようです。
レコードスプレーが問題です。もともと良い物ではありませんが多くの方がかけすぎという間違った使い方をしているようです。
ゴムシートをひっくり返すとわかります。酷いかけ方をした物はシートの裏側に白い蝋のような物が付いています。
本機ではそれは全く見られませんでした。白い物がシート裏に付いていると必ずアームのゴムが劣化しています。
正しいレコードスプレーの使い方はレコードに直接かけるのではなく乾式クリーナーに少量スプレーしてレコードを拭くのです。
アームはいちど取り外して磨き、軸部もクリーニングして感度良好です。
軸部は古くなるとヤニなどが付着して感度が低下します。ここをクリーニングすると驚くほど感度が蘇ります。
アームリフターもグリスを交換してゆっくりとスムーズに動作します。
使いやすいダイヤル式のインサイドフォースキャンセラーも問題ありません。
ちょっと残念なのはアルミダイキャスト製のターンテーブル部に若干腐食が見られる事です。
腐食は磨いて目立たないよう補修塗装を施しました。アルミダイキャストは美しく堅牢なのですがここだけは難点です。
ダイキャスト製の多いテクニクス機なども同様に腐食が起きます。特に素手で触れる部分に起きるようです。
本機はパーティクルボードを加工して木目シートで仕上げたものですが、経年でボードは劣化します。
本機ではほとんど劣化はありませんでしたが、この後も劣化しないよう裏側や木口にはクリア塗装をかけました。
その他、年式なりのキズ、スレはありますが全体的にとても綺麗です。写真は下手で申し訳ありませんが多めにupしておきました。
その他、回転も安定してストロボスコープも33回転、45回転も問題なく止まり、回転調整もスムーズに行えます。
なお、ストロボは電源周波数の50Hzと60Hzの切り替えがあります。
背面のシールには50Hzとありますが本機のACモーターはエディカレント型なので電源周波数の影響はありません。
この表示はストロボ表示でこれは簡単に切り替えられます。お使いの地域に合わせますので落札後にご指定ください。
また、劣化しやすい脚のインシュレーターのゴムもほとんど問題ありません。
付属品は取扱説明書のコピーと純正のゴムシート、EPアダプター、5ピンフォノケーブルとTT-61部用のアース線です。
フォノケーブルは一般的な5ピンタイプのコネクターなので簡単に入手でき、よりハイグレードな物と交換するのも良いでしょう。
オート機構など全く無いマニュアル式ですので慣れた方なら問題ありませんが
はじめてレコードプレーヤーをお使いになる方はアームのバランスのとり方や針圧の掛け方
アームの高さの合わせ方、カートリッジの取り付け方など一般的なプレーヤーの使い方をよくお調べになってからお使いください。
よくプレーヤーで問題になるのはカートリッジの取り付けによる接触不良とアームの高さ調整ですね。
さらに即決で購入された方には上述のVMカートリッジAT-E70(純正シェル付き)をお付けします。
私のお勧めの組み合わせで本当に素晴らしいサウンドをお楽しみ頂ける事でしょう。
ビクターはもともと日本ビクター蓄音器といったくらいでレコードプレーヤーの専門会社だったんですね。
この機種の頃には上位機種JL-B77には自社開発の最高レベル(現在でもこれを超えるのはあるのか?)の
モーターを開発し、この後ごく一時期ACモーター(JL-B61/TT-61など)を開発採用したり
またDCモーターを開発採用しその後のメインモーターとして自社機はもちろんヤマハやマイクロなどにOEM供給する事になります。
あのヤマハのGT-2000などのモーターもビクター製のようです。
もちろんTechnicsにも同じDCモーターを使った機種はありましたが、ビクターや東芝などにも多く供給していたものでした。
松下にならって短期間に試行錯誤した後に各社に多数供給できるモーターを開発したのだと思います。
同時期にこれだけ多くのモーター採用の機種があるのはプレーヤー専門会社としてのプライドがあったのでしょう。
この機種はクォーツロックになる前の機種ですので回転が安定しないのではとお気になさる方も居られるかと思いますが
私が多数のプレーヤーを使ったところでは全く問題ないと確信します。
クォーツロックでないと音が変化するとかクォーツの方が音が良いとかはありません。
クォーツなら調整がいらないというだけです。
ストロボが安定して止まらないと気にされる方も居られるかと思いますが
ストロボは電源の50Hzまたは60Hzの明滅を利用しているので目安にすぎません。
実際には電源周波数はその地域の電力使用量によっては微妙に変化するのです。
発電所はその変化をできるだけ少なくする努力はしていますがクォーツ並みにする事はできません。
DCサーボモーターですからプラッターの回転数は電源周波数には影響されません。
周波数で変化するのはストロボの明滅周期です。
この変化を回転の変化ととらえて頻繁に回転調整をするとボリュームが劣化してしまいます。
レコードプレーヤーは本機のように丁寧に作られていれば、まず良い音がします。
その中ではアームがいちばん音に影響するかもしれません。
機能的で美しいアームは良い音がするものです。銘機UA-7045の系統のこのアームもとても良いですね。
このアームはUA-5045とほとんど同じなので単品アーム同様に他に機種に組み合わせる事ができます。
アームだけでも2万円くらいの価値は十分にあるでしょう。でもアームを取り外して転売目的で落札はしないでくださいね。
ACサーボモーター使用の優れた単品ターンテーブルTT-61を組み合わせた、とても価値のあるプレーヤーと思います。
単品組み合わせタイプなのでグレードアップにも対応する超マニア向けといっていいでしょう。
実際にご覧になればその本格的な美しさと存在感に驚かれる事でしょう。その音の素晴らしさと安定感に納得されると思います。
レコードプレーヤーはオーディオ製品の中では特に繊細でその取り扱いには熟練が必要かと思います。
私は今でもレコードを聴くことがメインで多くのプレーヤーを使用してきました。
やはりオーディオマニアでしたらレコードを聴きましょう。
メカ部分がほとんどのアナログレコードプレーヤーはオーディオ機器の中では本当に特別な物と思います。
リサイクル業者の方などご自身で全くプレーヤーを扱う事のないオーディオとは無関係な方が梱包を行うとプラッター
ゴムシート、アームなどをロクに固定もせず送られてしまい本当に呆れる事が多いです。
いくら細かく説明してもわからないのですね。
この点私は趣味でプレーヤーを扱って来ましたので梱包、発送に関しては安心してください。
プラッター、ゴムシート、カウンターウェイトなどは取り外して同梱します。
アームはテープなどで固定して緩衝材も使います。
ただし、段ボール箱や緩衝材はリサイクルを使いますのでご了承ください。