相原求一朗（あいはら・きゅういちろう、1918年12月3日～1999年2月5日）は埼玉県川越市出身の洋画家で、新制作協会会員として活躍しました。本名は茂吉。病弱であったため若くして「求一朗」と改名し、実家の乾物商を手伝いながら独学で油彩画を学びました。戦争を経て1948年、猪熊弦一郎の研究所に入り、1950年の新制作協会展で初入選。1963年には「原野」「ノサップ」で新作家賞を受賞、翌1965年にも「白い教会」「赤い教会」で同賞を再度受賞しました。1968年には新制作協会会員となり、以後「北の風土」「私の風土」と題した個展を全国で開催。北海道をはじめとした厳しい自然環境を題材に、青灰色、白、黒を基調とする寒色系の色彩と、幾何学的構成による安定感のある画面で、大地の厳しさとそこに芽生える光を描き出しました。代表的な画集には日動出版や講談社から出版された複数の『相原求一朗画集』があり、1996年には北海道中札内村に「相原求一朗美術館」が、1997年には帯広市に「相原求一朗デッサン館」が開館しました。晩年から没後にかけては各地で大規模な回顧展も開催されています。

相原求一朗「水溜り」油彩 4号 1977年作 日動画廊取扱 ミニヨン展出品作
本作は、洋画家・相原求一朗が1977年に制作し、日動画廊主催の「ミニヨン展」に出品された作品です。相原がライフワークとして描き続けた北海道の風景、その魅力が凝縮された一枚となっています。雪の原野にたたずむ赤白の灯台と、水面に現れる小さな“水溜り”たち。画面全体を支配するのは、青と白を基調とした静謐な色彩。ひと気のない静かな風景でありながら、どこか温もりと光を感じさせる、不思議な詩情が漂います。

相原は戦後、猪熊弦一郎に学んだのち新制作協会で活躍し、独自の世界観を確立しました。幾何学的に整理された構図と、厚く塗り重ねられた絵肌（マチエール）は、自然に対する畏敬と内なる精神性を同時に感じさせます。《水溜り》という控えめなタイトルながら、そこには「大地の厳しさのなかにふと現れるやさしさ」へのまなざしが込められています。相原が描き出したのは、単なる風景ではなく、心の奥に静かに響く“風土の詩”なのです。