いかにも宮崎アニメに出て来そうなシルエットの飛行艇ですが、この飛行艇、実在します。
まだ世界中で複葉機が飛んでた1929年にドイツのドルニエ社が作った『空飛ぶ豪華客船』です。
全長40m、全幅48mで、この時代の世界最大です。
数字だけではピンと来ませんが、あのB-29よりも遥かに大きいとゆー(B-29が全長30m)。
内部は三階建てで、一番上が操縦室。2階が客室、ラウンジ、バー、サロンなどの旅客フロア。一番下が燃料タンク&貨物室。
この当時の旅客機は10人乗りぐらいですが、DoXは乗員10人、乗客150人という桁違いの輸送力を持ってました。
というか、豪華客船に翼とプロペラを付けて飛ばした様な気がしないでもない。
大きすぎて重量が50トンもある為(それでも軽くする為に機体は贅沢にも総ジュラルミン製)、エンジンは600馬力の12発で7200馬力!
翼の上に前後で連結したエンジンポッドが6個あり、全部で12個のプロペラを回します。このエンジンポッドは整備用通路で繋がれており、飛行中でも整備が可能です(何せ巨大な飛行機だから!)
Do Xはイタリアから発注され、全部で3機が製造されました。
初飛行から2か月後のデモフライトは169人(乗員10人、招待客150人、密航者9人)を乗せて成功しました(※飛行時間1時間)。この記録はその後、20年間破られてません。
この後、ヨーロッパからニューヨークまでの大西洋横断航路に就く予定だったのですが、やはり大きすぎて重すぎた為、まともに飛べず、1回アメリカまで飛んだだけ整備と修理に数か月という莫大な時間を必要とした為、とても実用できず、実際に旅客運用はされてません。
12基のエンジンを同調させるだけでも大変なのに、後ろ向きに搭載されてる6基のエンジンは常に冷却不足に悩まされ、7200馬力でも出力不足でした(DoXよりも小さくて軽いB-29でさえ、2200馬力×4の8800馬力だから、当然といえば当然ではあるのですが)。
航空機用のエンジンが、まだ600馬力しか無かった時代なので致し方なし。
もうちょっと時代が進めば、1000馬力や2000馬力のエンジンがポンポン出て来るので、うまく飛べたと思うのですが。
技術的に仕方が無いものの、明らかに出力不足な為、設計では高度3200mを飛べるはずだったのですが、実際には高度100mぐらいまでしか上がれないとゆー。
太平洋横断航路を目指していたため、航続距離はこの時代としては異様に長大な2800km。
速度は時速200km(この時代の飛行機として普通の速度)。
実に夢のあるロマンあふれる飛行艇だったのですが、ちょっと時代を先取りしすぎてて、うまくいきませんでした。残念/
3機作られた内の2機はイタリア空軍で試験運用された後に解体。1機はドイツのルフトハンザ航空が購入する予定だったのですが、導入されず。ベルリン航空博物館に飾ってありました。
当時の世界最大、最新鋭のマシンだったので、白黒のムービーが残ってます。Youtubeに実機の飛行映像や内部の紹介映像などが上がってます。