ブラジル・パーカッション達人マルコス・スザーノと二人のミナス派SSWが繰り広げるシンプル・セッションの美学。
サンバ/ショーロに特化した打楽器パンデイロを想像を超えた奏法で昇華させた世紀の天才マルコス・スザーノがメインでクレジットされたブラジル・ミナス・ジェライスからの素晴らしい作品が登場。近年頭角を現す新世代ミナス・サウンドのシーンから二人の若手SSWと組んだ、自由な雰囲気の中で生み出されたアルバムだ。シンガーの一人はヴィトール・サンターナ。2000年代後期より活躍する孤高のフォーク・シンガー/コンポーザーで、ソロ作品のほか、同郷の女性歌手マリアナ・ヌネスとのコラボレート作品もリリースする注目株。もう一人のジョアン・ピレスは、ポルトガル出身の吟遊詩人。本作1曲目でも取り上げられているカボ・ヴェルデへの造詣も深い才能だ。 マルコスのパンデイロを主体としたパーカッションと繊細と大胆さを備えたギターのカッティング、そしてヴィトール、ジョアンの絶妙なヴォーカルの掛け合いが、ミナスの澄んだ空気感とアフロ・ルーツのアグレッシヴな装いを絶妙にブレンド。一部トラックではギター(カエターノ・ヴェローゾのバックで名を馳せるペドロ・サーが参加)、ベース、パーカッションをアクセントとして挿入し、ミナス産アシッド・フォークの新たな展開を感じ取ることができる生々しいサウンド・スケープは、研鑽のヒューマニズムに満ちた味わい。 ミナス・フォルローレをバックボーンに、若きセンスが注ぎ込まれたオリジナル楽曲も耳を衝く。タイトル曲M2とM8のインストゥルメンタル、M3は同郷の実力者セルジオ・サントスがギターで参加、英詞による変則的サンバM9、牛追い歌をソリッドに綴ったM10、そして唯一スザーノを抜いた二人がヴァルサ(ワルツ)で麗しく締めくくるラストまで、ドラマティックな構成も素晴らしい。ミルトン・ナシメントやジョアン・ボスコに代表されるミナス発音楽のアコースティックな進化系がここにあるのと同時に、レニーニ&スザーノの名作「OLHO DE PEIXE(邦題:魚眼)」の延長線上にある1枚としても意義深い。
【Musicians】
VITOR SANTANA - vocal, violao
JOAO PIRES - vocal, violao
MARCOS SUZANO - percussion
PEDRO SA - elec.guitar #4,8,9
MATEUS BAHIENSE - percussion #1,5,9,10
SERGIO SANTOS - violao #3
THIAKOV - bass #6,9
VINICIUS RIBEIRO - bass #1
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