安部龍太郎★天馬、翔ける 源義経(全3巻)★ 集英社文庫

安部龍太郎★天馬、翔ける 源義経(全3巻)★ 集英社文庫 收藏

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★商品説明★ 安部龍太郎著 「天馬、翔ける 源義経(全3巻)」 集英社文庫

 「天馬、翔ける 源義経(上)」     2012年 10月 文庫2刷
 「天馬、翔ける 源義経(中)」     2012年 11月 文庫初版
 「天馬、翔ける 源義経(下)」     2012年 12月 文庫初版
      定価    各巻 800円+税  460頁~486頁

★著者略歴★  1955年、福岡県生まれ。久留米高専卒。図書館に勤務する傍ら、短編で日本史を網羅した「血の日本史」で90年デビュー。同書および94年発表の「彷徨える帝」が山本周五郎賞の候補となる。2005年「天馬、翔ける 源義経」で第11回中山義秀文学大賞を受賞。2013年「等伯」で直木賞受賞。

★作品内容★  第11回中山義秀文学大賞を受賞作品。源義経といえば”判官贔屓”(九郎判官義経の役職からとった)で知られるように悲劇の主人公だ。幼少期の牛若丸の時代や、実は生き残って大陸に渡ってチンギス・ハーンになったとかの伝説も多い。実際は、死後だいぶたって書かれた”義経(ぎけい)記”が元になり、小柄な美丈夫というイメージが定着しているが、実際は容貌魁偉な大男だったなどという説もある。ともかく、伝説部分は回避して、美丈夫説をとっているが、新たな義経像を作り出した。
 <上> 都を脱出して6年、奥州平泉で藤原氏の庇護で成長した義経22歳の時から物語は始まる。父親の仇を採るために奥州で雌伏していた義経だが、平清盛の横暴に耐えきれなくなって、皇室から各地に令旨が下される。義経も一躍駆け付けようとするが、都に近い木曽義仲、そして伊豆に流されている兄の源頼朝の動向も気になる。物語は血気盛んだが無謀な義経22歳と、伊豆に流されて17年34歳の、慎重といえば言葉はいいが、疑い深い頼朝の話が交互に語られる。平清盛の横暴に耐えきれず後白河法皇が各地に書を送る。立ち上がることに慎重だった頼朝もこのままでは殺されると思い、ついに立ち上がった。そこに駆けつける義経。源氏の嫡男という血筋はあるが流民の頼朝は兵を持たない。ただ、領地を平氏にとられたくない関東の豪族に助けられ、関東を支配することができた。しかし、京都に近い木曽義仲が先に京都に入り平氏を追い出した。勢力基盤の脆弱な頼朝は、あの手この手で、兵士の残党や、木曽義仲を追い落とそうとする。頼朝・義経・木曽義仲など後に北条氏が残した正史(吾妻鏡)や義経ひいきの物語に引きつられない新たな物語を作り出す。特に悪妻と言われた北条政子の人物造形など面白い。上巻では、頼朝兄弟の出会いから木曽義仲の最期まで。
 <中> 木曽義仲が撃ち滅ぼされた後、義経中心の源平合戦が語られる。源平合戦のハイライト部分で、一之谷・鵯(ひよどり)越え・屋島・壇之浦と歴史書の名場面が続く。ただ歴史書では、お互いに名乗りあったりその時の鎧や衣装が長々と書かれ、はっきり言って読むのがかったるい。そこをあっさり現代風に書き直し、義経・頼朝兄弟の思いが交互に語られることによって、あの裏にはこんなことがあったんだと理解しやすい。義経は平家追悼の命を受け、一之谷に本拠を構える平家に対して、鹿ぐらいしか下りないという崖を駆け下り、一気に勝利を収める。嫉妬する頼朝により総大将の命は下りなかったが、戦線が膠着したので義経に四国屋島を攻撃することが許される。けれど血気にはやる義経は平家を追い払うことはできたが、痛み分けになる。そして平家滅亡の地となる壇ノ浦の戦い。
 <下> 平家を滅ぼすこてゃできたが、鎌倉を動かない頼朝と、都で評判のいい義経は決定的な亀裂が待っていた。義経の悲劇物語が好きな人達にとってはこの最期の巻が一番の読みどころ。実は幼年期の義経と弁慶の出会い伝説は、子供向けにもよく知られているし、この後の弁慶の活躍は歌舞伎などの名場面としても知られているが、弁慶が弁慶と名乗るのは、中巻半ばを過ぎて、あの勧進帳の場面もカットされている。そういう意味では伝説をなるべく排除した人間としての義経頼朝物語といえる。ついに頼朝との戦いを決意した義経だが、後白河法皇に翻弄され、戦いを前に京都から逃亡して、比叡山やそのほかの場所を転々とする。静御前との愛や、その結末が胸を揺さぶる。

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