三省堂/創英社 １６０頁、写真５０葉、１３２０円 ２０２０年１２月刊行   

  群馬県立太田高校応援団の草創期（昭和四十年～四十二年）の話。   著者は「爺の繰り言、昔話、よた話」、毒にも薬にもならない、ひとりよがりの、どうでもよい本だ、と謙遜している。しかし、高校時代は著者にとって青春真っただ中の、痛快で、面白くて、暑くて、辛くて、くたびれた、そして輝ける時だった。ふりかえると、今もって愛しさで胸を締めつけられる思いがするという。  逸平は高校時代、応援団員として先輩や同級団員、後輩らと、豊かな時を共有した。その経験は、半世紀経った今も、若き日の感傷と甘酸っぱい思い出になって蘇って来る。  高校の三年間、春夏秋の大会に野球部は一勝もできなかった。野球部とは逆に、太田高校応援団の評判はこの時期、大変高かった。それは自負や自慢ではなく、実際の姿かたちが気品高く、スタイリッシュで力強く、格好が良かった。それだけに、もったいないし、悔しい思いがする。その思いが本書をまとめる原動力になったとのこと。  令和二年、応援団は五十六代になっているが、半世紀前の著者の頃に創案した型がそのまま踏襲されているという。野球応援の様々な型はもとより、著者も苦労した大技「金山太鼓」、「逍遥歌」等々をリーダー祭などで現役が苦労して演じて好評を博している。  著者がさんざん練習したのと同じ型を現役が懸命に踏襲しようとしている姿に半世紀前の自分の姿が重なる。そこには甘美なカタルシスがあった。    昭和40年代の高校応援団の雰囲気が実にリアルに描かれており、かつての応援団文化を次代に伝える貴重な書籍資料。同時に、過去のエピソードに終始することなく創団期OBとしての目線で現在の高校応援団をとらえ、いくつかの問題点を提起されながら（＝現在の全国の応援団が普遍的に抱えている問題でもありました）、それが現役高校生応援団員への大きな励まし・エールとなっている(月刊「応援団」より引用)。   閉塞感漂う今、元気をいっぱいもらえる、昭和感満載の、痛快な書。新品です。