本作『Rush in Rio』は、このカナダのパワフルな3人組にとって、驚くべきことに5作目のライヴ・アルバムとなる。そして5作の中ではおそらく本作がベストだ。『Vapor Trails』ツアーのクライマックスを飾る公演の模様を記録したもの。2002年11月23日、リオ・デ・ジャネイロのマラカナ・スタジアムにて行われ、ゲディ・リー、アレックス・ライフソン、ニール・パートの3人は、興奮のるつぼと化した6万人の観客を前に熱演を繰り広げた。
人気曲「Tom Sawyer」からスタート。ラッシュは、みずからの変遷をたどりながら、底なしのエネルギーに支えられた華麗な音楽性を1曲ごとに見せつける。ほぼ3時間にわたるセッションはまったくもって非の打ちどころがなく、だれが聴いても涙ものだ。今や古典となった70年代のプログレ・ナンバー(「The Trees」、「2112」)、軽さが加わった80年代(「New World Man」、「Bravado」)、現代性を感じさせる90年代(「Driven」、「Leave That Thing Alone」)、そしてもちろん肝心の『Vapor Trails』からのチューンも忘れるわけにいかない。パートが猛烈なドラム・ソロを披露する「O Baterista」、リーとライフソンがアコースティック・ギターを持って演奏するアンプラグド版の「Resist」は、この晩の意外なハイライトといえるだろう。
ボーナス曲としてバンド公認のブートレッグ音源が2トラック追加されている。いずれも同ツアーの前半のギグを収めたものだ。「Between Sun and Moon」(オリジナル・ヴァージョンはアルバム『Counterparts』に収録)と「Vital Signs」(アルバム『Moving Pictures』)がそれである。