・書籍名 : Dumpling and His Wife: New Views of the Genus Conophytum
・著者名 : Steven Hammer & Christopher Barnhill (Photography)
・出版社:EAE Creative Color Ltd. & Steven Hammer
・発行年:2002年
・形式 : 洋書(英語)、303mm x 218mm、398ページ、ハードカバー
1冊だけ余分がありますので出品します。カバーは背表紙に軽い日焼け、小さな折れ、反り、スレがあります。また、ハードカバーには角潰れがあり、内部は表紙から見て右下には折れが見られます。一方で、内部は使用感はなく、汚れや書き込みはなく、20年以上前の書籍としては、比較的綺麗かと思います(写真参照)。
<書籍説明>
本書はアフリカ南部を中心にしたハナミズマ科のConophytum属(コノフィツム)のリビジョン及び総合解説書となります。400ページ弱の大判ハードカバーですので、ドッシリと重い書籍となります。本格的にConophytumをやり込むならマストの書籍かと思います。しかしながら、本書は世界的に、かなりの入手難書籍の一つとなってしまっています。
著者は南アフリカのSteven A. Hammer(スティーヴン・ハマー, 1951-)となり、現在はケープタウン大学のフェローと立場にあるようです。同氏は、メセン類(女仙類、ハナミズマ科)を中心としたフィールドワーカーとして知られ、同分類群の分類学的な権威として知られています。特にConophytumやLithopsの専門家となり、多数の論文や書籍を発行しています。
同氏は、1993年に'The Genus Conophytum: A Conograph'を出版しており、本書は10年後に、この大幅アップグレード版として出版されました。なお、今のところ、本書が最後のモノグラフとなっており、ここから22年間は新たなConophytumの総説書は販売されていません。
なお、タイトルは直訳すると「皮団子とその配偶者(夫人)」となります。この一見して意味の分かりづらい奇妙なタームは1803年に植物学者のA. H. Haworth(属名Haworthia:ハオルシアとして献名されている)が、Mesembryanthemum obcordellum(= Conophytum obcordellum)を扱った論文で、洒落の効いた例えとして記述しているところから取ったと記述されています。なお、"Dumpling"とは具材を皮に包んだ料理となり、日本では餃子やワンタンあたりがイメージしやすく、おそらく脱皮時期の個体を指し、"his wife"については、同個体の周りに群生していた同種の小型株を指しているのではないかとの示唆があります。実際、本属はそれなりの個体数が群生する地点が多いことが知られていますので、その状況を表しているのではないかと感じます。
内容としては、Conophytumを16節(Section)に分け、100種89亜種19変種(166分類単位)として扱っており、1993年の分類体系からも種数(分類単位数)が大幅に増加しています。なお、他の分類体系でも、種・亜種・変種レベルでは諸説あるようですが、Lithopsと比べて種数が多く、種分化しやすい群である事が解ります。
全種全亜種全変種の写真(野外株、栽培株)が掲載され、過去に出版されたConophytum関係の書籍の中でも情報量はズバ抜けています。ここに種ごとの自然史関係の歴史、分類学、形態(他種との区別点)、生態、生理、土壌、気候、分布(地図)、引用文献、栽培方法等と一通りの情報がしっかりと記述され、全体に文字量が多く、情報量は膨大となります。
また、園芸品種については、後段でまとめて写真付きで48種が紹介されており、各品種のリリース時期や出自情報まで詳しく記述されています。この手の自然史系の書籍では、園芸品種の解説は手薄になりがちですが、栽培方法と併せてかなり手厚く記述されています。
これ以外にも、参考資料として、花の芳香成分による受粉や分類の関係研究、系統別の表皮構造研究(電子顕微鏡)、染色体研究、栽培の歴史、生育地の土壌研究、過去の園芸コレクションリストやカタログリスト、本書における分類体系などが収録されています。
同じS. Hammerが取り扱ったLithopsの総説書籍は、比較的多く印刷されているようで、アップデート版も出版されて、いまだに新書在庫が存在しますが、一方でConophytumについては不思議と印刷数が少なく、軒並みレア本となってしまっています。本書は特に入手難となっており、海外でもそう簡単に入手できる状況ではなく、あっても価格が大きく高騰しています。提示額は高額になりますが、入手時の価格も高額でしたのでご容赦ください。