ナショナル 5T-320 製作年不詳
mt管トランスレススーパーとACモーター駆動の時計をキャンディレッドの木製キャビネットに組み込んで、
ミッドセンチュリーデザインを纏った小粋なラジオ。
ラジオと時計の相性の良さは言うまでもありませんが、テレクロンに代表される電源周波数同期モーターを使用した
クロックラジオが普及した米国とは異なり、本邦における真空管ラジオ時計は極めて限られた時期の産物であったに違いありません。
すなわち、空白のジャンルであり、作例をほとんど目にしません。それゆえ現代に残された個体は極めてレアと言えましょう。
さて、このラジオの時計ムーブメントであるオートイナーシャクロック(同期周波数47~62Hz)は、残念なことに通電すると、
異音を発するうえ、針は不動です。処置に悩むところですが、セットされるチャーミングな時計針を残したいと考えて、
単3電池ムーブメント等への換装はやらないことにした次第です。
安全の為、ラジオシャシーから給電していたACラインを撤去しています。
ラジオ部分は、12BE6, 12BA6, 12AV6, 35C5, 35W4による初期型トランスレス、フローティングアース方式です。
時計調節の際、シャシーに触れても感電が起きにくいように配慮したものでしょう。
特筆すべきは、フェライトバーアンテナ装備である点です。
本機と同型のバーアンテナは、1955年のナショナルやシャープ製品に作例が見られますが、
果たしてその実力はどうだったでしょうか?
名古屋市内、SRC構造マンションで受信状態の劣悪な拙宅における試聴結果を以下にお示しします。
結果: 昼間3局、NHK第一、NHK第二、CBCラジオ受信
他機との比較において
・標準5球スーパーをはるかに凌ぐ感度(NHK第一しか入らない)
・キャビネット内蔵ループアンテナ装備 米国製トランスレス高一スーパーと同等
・リード線アンテナを室内に垂らした高一中二通信機型真空管受信機と同等
・バーアンテナ装備 米国製トランスレススーパーと同等
高性能かつ方向指向性の強いバーアンテナは、本機のような小型ラジオにはうってつけの装備であることが
見事に示されました。
整備内容
・劣化コンデンサ、抵抗器の交換(電源ケミコン、ボリュームコントロール500kΩA含む)
・配線引き直し
・省略部品の補完(バイパスコンデンサ等)
・クロック給電部の撤去
・ACコード交換
・ダイヤルコードのテンション調整
・旧塗膜剥離、ステイン&ヴァーニッシュ
時計は動かないけど、それでもいいと思える方
ミッドセンチュリーデザインがお好きな方
ぜひご検討をお願いいたします。
(2024年 11月 6日 10時 52分 追加)シャシー写真についている電源コード、プラグは問題があったのでモールド型黒プラグに変更しています。
紛らわしい写真ですみません。