フランス出身のマルチインストゥルメンタリスト、ジュリアン・ガウリエ一人によるゴシックシンフォニックロックプロジェクトとして２００８年に開始され、後にドラムスのデイヴィッド・ペロン、ヴォーカリストのマリー・ギラウメが加わる形で結成されたスプリーンアルカナの２００９年発となるデビュー作。リリースはレーベル無しの完全な自主制作により５００枚プレスでリリースされ、宣伝もプロモーション活動も何もせずにほぼ口コミでマニア筋に評判が広がり、遂には５００枚があっという間に完売に至ったという経緯。この後２０１４年に２作目をリリースしてバンドは尚、勢いを増して活動継続中。本作に於いてはジュリアン・ガウリエの個人スタジオで膨大な時間を費やして制作されたとのことで、この点では昔でいえばマイクオールドフィールドを彷彿とさせるものの、昨今の音響機器の発達でさほど多くのダビング工程を要しないでも済んでいるというのが、例えば音の良さに如実に表れてもいて、７０年代のようにコモリ感や抜け感の鈍さが全くない明瞭さなど、個人スタジオレベルでもこれが実現できているという時代性を感じさせる部分。編成はメロトロン、キーボード類、ギター、ベース、ドラムス、ヴォーカルによる布陣。特に１曲目ではたいていのシンフォニックロック好きをノックアウトするに充分なインパクトを放ち、不穏なＳＥに続いて暗鬱なメロディーが垂れ込める中から突如鳴り響くストリングスメロトロンとコーラスメロトロンの波状攻撃、これを切り裂くモダンヘヴィネスを応用したヘヴィプログレ的テクスチャーなど、次世代型アネクドテンとも言える音型。総体的にはリズム面では変拍子系をあえて外して４拍子、８拍子が基調のシンプルな構成にしている部分ではノヴァリス的な手法を感じさせ、ポストロックに出会ったピンクフロイドみたいなメロウな内省感にも持ち味があって、特にメロトロンに耳が集中してしまうというのは仕方がないとしても、これを決め技にしなくとも充分に成立している楽曲の良さなど、特に耽美的抒情感や暗黒ムードがツボな好事家には待ったなしの内容。SPLEEN ARCANA-the field where she die(not on label)

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