絶版希少本 京の茶室 全3巻 「東山編」「西山・北山編」「千家・宮廷編」茶室建築 日本建築 茶道建築 日本庭園
岡田孝男
1989年
学芸出版社
各約286ページ
各約22x16x2.5cm
ハードカバー 全3冊セット
本文モノクロ
※絶版
全国各地の茶室の「本歌」となるような代表的な京都の名茶室150席を網羅し、豊富な写真と平面図で解説・紹介した書籍。
各地の著名なお茶室を拝見して回る場合、写真の撮影を禁じられているところが殆ど。
巻き尺で寸法を測るような、貴重なお茶室を傷つけかねない無作法もできません。
茶道建築、茶室建築、日本庭園作庭の資料としてはもちろん、お茶室の拝見の事前学習用にも好適、茶室の見取り図・平面図、実測図や写真を多数掲載し、来歴や見どころなどを詳細に解説した本書は、貴重な基礎資料として大変役立つセットです。
【序文】より一部紹介
私は今日、九十一歳の誕生日を迎えました。
健康で長生きをしていられる喜びとともに、自分の来し方を振り返ってみますと、大学で建築を学んで以来、一貫して様々な形で建築に関わってきましたが、その生活の礎には常に「茶室の研究」ということがあったと言えます。しかし、私にとっては建築家としての専門的な調査・研究ということの以前に、各地の茶室やお庭を鑑賞し、お茶を点てたりいただいたりすることが日常生活の一部となっていたとも言えるでしょう。
こうした私の半世紀以上に及ぶ体験を、お茶を愛し、茶室に興味を持っておられる多くの人たちになんとかして知って貰いたいというのが私の長年抱いてきた夢でした。何度も何度も茶室に通って調査・研究した事柄や、その茶室にまつわる人物や歴史の流れを、誰にでも分かるよう出来るだけ丁寧に紹介したいと思っていました。こうして今、多くの皆さんのご協力を得て、長年積み重ねてきた研究の一端を『京の茶室』(全三巻)としてまとめることができ、後世まで長く残るであろうことは誠に感慨に耐えません。
本書をまとめるまで諸般の事情によって長い年月を費やしましたが、本書の布石となったものは、昭和二十六年から三十四年にかけて雑誌「新住宅」に100回にわたって連載を続けた「草庵巡り」でした。戦後の潤いのない社会にあって、この迎載は読者諸氏から大変好評を博し、私の長い人生の中で茶室の研究に大きな刺激を受けたことを思い出します。本書は、この連載のなかから京都の茶室を選び、再録に当たっては各茶室の持主諸賢のご協力・ご教示を得て、再調査ののち大幅に加筆・訂正してまとめたものです。
茶室は全国各地に散在しており、優れた特徴を持つものもあると言えますが、桃山時代以来の長い茶道の歴史のなかで、その質においても量においても京都が抜きん出ています。
したがって本書では、全国各地の茶室の「本歌」となるような代表的な京都の名茶室を約百五十席網羅して紹介しました。そして、茶室の見学やお茶会の際にも気軽に携帯できるよう、「東山編」「西山・北山編」「千家・宮廷編」の三冊に分けてそれらを収録しています。各地方にある名席につきましては、稿を改めて紹介したいと思っています。
本書では、最初に各茶室が建てられた歴史的背景や、それにまつわる人物像を詳しく紹介して導入とし、各茶室の特徴を豊富な写真と平面図を駆使して解説しています。さらに、代表的な名席については、実測に基づいて部材と寸法についても詳解しましたから、茶室建築の専門家やこれから茶室を建てようとしている方にも参考にしていただけると思います。本書が読者の皆さんの茶室への興味を一段と深める書となれば幸いです。
本書に掲載した写真のほとんどは多比良敏雄氏の撮影ですが、残念ながら氏は既に他界されていますので、今回の出版に当たってはご子息の写真家多比良誠氏にご協力いただきました。また、茶室建築については堀口捨巳同士、茶道については武者小路千家官休庵の先代故愈好斎聴松宗守居士並びに当代の有隣斎徳翁宗守宗匠に種々ご教示いただきました。
ここに記してお礼申しあげます。
(中略) 「草庵巡り」も今月で100回に達しましたので、これを機に一応終結することにします。
昭和二六年九月に洛東芭蕉庵を訪れてから、今月猿面茶席を訪れるまで、あしかけ九ヶ年間かかっています。
初めは、せいぜい10回位続けば良い方だと思っていましたが、割に評判が良くて、おいおい読者諸氏から期待されるようになり、月一回の「草庵巡り」を唯一の楽しみとして、70回位まで続けたでしょうか。調達局を辞してからも、その余勢で100回まで続いたような次第です。
【目次】より
京の茶室 千家・宮廷編
●三千家の茶室
表千家の茶室
裏千家の茶室
武者小路千家の茶室
藪内家の茶室
久田家の茶室
槻内家の茶室
●宮廷の茶室
桂離宮の御茶屋
修学院離宮の御茶屋
京都御所の御茶屋
仙洞御所の茶室
●本願寺の茶室
西本願寺の茶室
東本願寺の茶室
京の茶室 東山編
●南禅寺の茶室
金地院の八窓の席
慈氏院の看雲席
南禅院の龍淵窟
天授庵の松関
真衆院の螢雪庵
本坊の不識庵
●建仁寺の茶室
本坊の東陽坊
常光院の道安囲の席
大中院の燕舞軒
禅居庵の龕破の席
正伝院の如庵
●高台寺の茶室
傘亭と時雨亭
鬼瓦の席と遺芳庵
岡林院の忘知席と小堀違州の茶室
●東山の茶室
曼殊院の八窓の席
石川丈山の詩仙堂
洛東芭蕉庵
西翁院の淀看の席
銀開寺東求堂の同仁斎
青蓮院の好文亭
山紫水明処
真葛ヶ原の西行庵
稲荷神社の御茶屋と
荷田春満の旧宅
醍醐三宝院の枕流亭と松月亭
八幡の松花堂
京の茶室 西山・北山編
●西山の茶室
西芳寺の湘南亭
妙喜庵の待庵
水無瀬神宮の燈心事
厭離庵の時雨亭
●北山の茶室
仁和寺の遼廓亭と飛濤亭
等持院の青漣亭
金閣寺の夕佳亭
龍安寺の蔵六庵
高山寺の遺香庵
神護寺の了々軒
●大徳寺の茶室
高桐院の松向軒と鳳来
真珠庵の庭玉軒
黄梅院の昨夢軒
聚光院の閑隠席と桝床の席
龍光院の密庵
孤篷庵の忘筌の席と山雲床の席
大光院の蒲庵
玉林院の蓑庵と霞床の席
大仙院の書院と庭
大徳寺の新しい茶室
●妙心寺の茶室
桂春院の既白軒
海福院の茶堂
●相国寺の茶室
●光悦寺の茶室
【著者について】観光当時の情報です
岡田孝男
明治三十一年三月二十四日、島根県大田市久手町に生まれる。
松江中学、第七高等学校、京都大学工学部建築学科卒業。
大阪三越住宅建築部、住宅営団広島支所、総理府特別調達庁大阪支局、帝塚山学院大学に助務。工学博士、一級建築士。
武者小路千家官休庵に入門して茶歴五十四年「相伝」を受ける。
著書に「近畿茶室行脚」(晃文社)「三千家の茶室」「大徳寺の茶室」「松江の茶室」(茶室研究会)「茶室の平面」(大阪府建築士会)「茶室の話」(学芸出版社)など多数。九十一歳。