ジルコンはキュービックジルコニアより何世紀も前から存在していたにもかかわらず、ジルコンは不当にもキュービックジルコニアとよく混同されてしまいます。
キュービックジルコニアは安価な合成のダイヤモンドの代用品で、無色のジルコンに似ている上に、名前の響きも似ています。ジルコンも、ダイヤモンドの代わりに上質な代替品として使われることがありますが、ジルコンそのものがれっきとした価値のあるジェムストーンなのです。
ジルコンの輝きは、ディスパーションと呼ばれ、ジェムストーンの中に入った光がプリズム効果で虹色に分散することで現れるものです。ダイヤモンドのディスパーションにほぼ近いディスパーションを持っているという点で、ジルコンの輝きは他のどんなジェムストーンにもひけをとりません。
ジルコン・カットは、ラウンド・ブリリアント・カットの変形で、パビリオン(ガードルから下の部分)にさらに8つのファセットを加えたものですが、ジルコンのこうした特性を活かすためにデザインされたものです。
ジルコンのとてもユニークな特徴として、複屈折(二重屈折)があります。これは、ジルコンの内部を光が通るとき、二つの光線に分かれることです。結果として、バック・ファセットが二重に見え、さらに厚みが増して見えることになります。
また、ジルコンは金剛光沢(ダイヤモンド光沢)があり、ダイヤモンドの代わりとしてふさわしいと言われています。 大陸移動、造山運動、激しい小惑星の衝突といった途方もない熱と圧力のもとで他の岩石や鉱物が溶解し変成しても、ジルコンは無傷のままです。
かつてはダイヤモンドの代わりとしか考えられていませんでしたが、実はジルコンは信じられないほど古いものなのです。西オーストラリアで発見された小さなジルコンの欠片は、地球上で現在知られているなかで最も古い物質で、44億年前のものです(地球ができたのは、その1億5千万年足らず前のことです)。
ダイヤモンドはそれに比べるとかなり新しく、たかだか33億年前のものしかありません。 カンボジアが華やかなブルージルコンの世界一の産地であるのはおそらく間違いありません。素朴でひなびた、驚くほど美しい地ラタナキリは、世界最高品質のブルージルコンを産出する、カンボジア産ジルコンの主要産地です。「ラタナキリ」とは文字どおり「宝石の山」という意味です。
伝統的に、ジルコンの採掘はラタナキリ州の州都バンルンから30キロメートル余りのボー・ケオ近郊で行なわれていましたが、今では新しい採鉱地区がオープンしています。
バンルンの南、森の中に採鉱キャンプがあり、地下約4.5メートルの沖積層に入っていく狭い坑道から、労働者たちはせっせとラタナキリ・ジルコンを採掘しています。著者(リチャード・W・ヒューズ)も2001年にこの僻地の採鉱所を訪れ、いまだに昔ながらの手作業で採掘が行なわれていることを知りました。実際に目にすることで、こうしたすばらしいジェムストーンを掘りだすのにどれだけの労力が注がれているか実感できました。
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