尾張徳川家伝来『新藤五国光 正和三年』将軍家より拝領した清湛院お輿入道具 本阿弥光常折紙 水戸家当主徳川圀順鞘書 本阿弥日洲添状
鎌倉幕府が成立し武家政権が始まるも当時の鎌倉はまだまだ
京の都からは遠い東国の地方都市という位置づけでした。刀鍛冶も
名のある者は殆ど居なかったようです。そこで諸国の名工が召し出されて
次第に鎌倉在住の鍛冶が増えます。その中で新藤五国光が相州伝の
事実上の創始者として鎌倉時代中期から後期に差し掛かる頃に登場します。
新藤五国光は京都の粟田口国光の子あるいは門人と言われています。
刃文は直刃を得意としており、粟田口物より沸がつくのが特徴と
されています。古来より名手として知られておりその功績から鎌倉時代を
代表する名工中の名工と評せる鍛冶です。
この刀は鎬造、庵棟、身幅重ねともに尋常、反りやや深く、切先は中切先と
なって気品に溢れた見事な太刀姿をしていると思います。鍛えは板目肌に所々
大き目の肌を交えて、地沸微塵に厚くついて、地景よく入り、鉄色冴えた
美しい鍛えになっていると思います。刃文は浅いのたれに互の目が交じり、
匂深く、沸よくついて、金筋、砂流し盛んにかかり、明るく冴えた刃を焼き上げています。
帽子は尖りごころに掃きかけて返っています。表裏に棒樋があります。
銘は新藤五国光、裏年紀は正和三年（1314）があります。本阿弥光常の折紙が
付属しています。光常は十二代目当主で彼の折紙はその権威から古折紙と呼ばれています。
折紙包みには清湛院婚礼の道具として将軍家より拝領とあります。水戸徳川家十三代目
当主であった徳川圀順（1886年～1969年）の鞘書があり寛政十一年の清湛院の御輿入れの
時に則重の小脇指とともに拝領した旨が書かれています。清湛院は尾張徳川家十代目
徳川斉朝の正室。十一代将軍徳川家斉の長女で鎮子といい淑姫（ひでひめ）と称しました。
家斉は長く将軍として君臨し、53人の子女をもうけました。成人したのは28名といい、
大名に嫁がせたり、養子に出したりして大名統制をしようとしたと言われています。
長女を尾張徳川家に嫁がせたのもこの婚姻がいかに重要な意味があったという事が伺えます。
刀剣研磨部門で人間国宝であり研ぎの見識から優れた鑑定家でもあった本阿弥
日洲の添状が付属しています。伝来出来ともに素晴らしい新藤五国光の太刀であり、
同作中の傑作であると思います。
長さ/67.4㎝ 反り/1.8㎝
元幅/27.9mm 元重/5.8mm 先幅/19.2mm 先重/4.3mm 刀身のみの重量525g
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